雪道で迷わないタイヤチェーン装着のタイミング

 雪の降り始めというのは本当に判断が難しいものです。路面はまだ黒く、走行には問題が無いよう見えるのに、気付けば気温が下がり次第に雪が積もり始める。そんな時、スタッドレスタイヤを履いていないクルマならいつチェーンを装着すべきか、が重要な分かれ目になります。

 安全を第一に考えれば早めの装着が正解です。しかしながら、実際の現場ではどのタイミングが早めなのかが分からない。だからこそ多くのドライバーが迷います。

 ここで、判断の基準となる実際の走行シナリオを想定してみましょう。

 自宅を出発し、雪国へ向かっています。出発地は快晴、道路も乾いています。高速道路を1時間以上走りサービスエリアで休憩を取ると、遠くの山は白く染まっているも、自分の周囲はまだ雪がありません。しかし、サービスエリアに入ってきた他のクルマは泥まみれで、屋根には雪が積もっています。ああ、この先は雪なんだな、と気づく瞬間です。

 ここで最初に確認すべきは、気温と路面の変化です。走行を再開すると空が曇り風が冷たくなり、パラパラと雪が舞い始める。ここで装着か? と迷うでしょう。しかし、路面がまだ黒く、濡れているだけであれば、チェーン装着は時期尚早かと。ドライやウェットではチェーンが傷みやすく、車体にも負担がかかります。

 ただし、雪が激しくなり、路肩やガードレール、標識の上にうっすらと積もり始めたら、これは予兆です。対向車を観察してみましょう。

 スタッドレス車が多い地域ならチェーン装着車がすぐには見えないかもしれませんが、トラックや観光バスがチェーンを付けて走っていたら、それが実質的な警報です。彼らは経験豊富で、先の路面状況を熟知しています。1台でもチェーン装着車が出てきたら、自分も準備を始めるタイミングと考えてよいでしょう。

 さらに注意したいのは、外気温と路面の状態です。外気温が5℃を下回り始め、路面がシャーベット状に変化したら、タイヤのグリップは一気に低下します。特に夏タイヤでは、湿った雪が薄く積もっただけでも滑ります。

 視界に真っ白な景色が広がった瞬間が、事実上のタイムリミットです。そこまで行ってからでは遅く、チェーン装着場所に安全に入ることさえ困難になる場合があります。

 実際の高速道路では、電光掲示板が最も確実な情報源です。「冬用タイヤ規制」や「チェーン規制」といった表示が出たら、それが明確な装着指示です。

 この表示が出てから着けるのではなく、表示が出る少し前に備えておくのが理想です。特に「この先スベリ止必要」という文言を見たら、すぐに最寄りのPAやSA、または指定のチェーン着脱場で装着を行いましょう。路肩での装着は非常に危険です。

 そして下山や帰路では、逆の判断が必要になります。路面に雪が無くなったら外す準備を。ドライ路面を長時間チェーンで走ると、チェーン切れやホイール損傷の危険があります。外す際も決して路肩で行わず、安全なチェーン脱着場で行うことが基本です。

 結論として、チェーン装着の最適なタイミングは、天気や路面、周囲のクルマ、気温など複数の要素の変化点を感じ取ることが鍵です。雪が本格的に積もる前、そして視覚的にも白さが増し始めた瞬間に備えるのが理想的です。

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