スタッドレスタイヤの燃費は夏タイヤと比較してどうよ?

 スタッドレスタイヤの燃費は、一般的に夏タイヤに比べると悪くなる傾向があります。但し、必ず大幅に悪化すると断言出来るほど単純ではなく、その理由や影響の大きさを理解すると、納得しやすくなります。

 まず、燃費に影響を与える最大の要因は転がり抵抗です。転がり抵抗とは、タイヤが路面を転がる際に失われるエネルギーのことで、この抵抗が大きいほどエンジンは余分な力を使う必要があり、結果として燃費が悪化します。

 夏タイヤは乾いた路面や雨天走行を前提にされており、ゴムは比較的硬めで、路面との摩擦を必要以上に増やさないよう工夫されています。その為に転がり抵抗が小さく、燃費性能を重視した設計になっています。

 一方でスタッドレスは、雪道や凍結路面で確実に止まり、曲がり、発進出来ることを最優先に製造さています。その為にゴムは低温でも硬くならないよう柔らかく、細かな溝やサイプと呼ばれる切れ込みが無数に入っています。

 この柔らかさと複雑なトレッドパターンが路面をしっかりつかむ反面、走行中にゴムがたわみやすく、エネルギーのロスが増えます。これがスタッドレスの転がり抵抗が大きくなりやすい理由であり、燃費が悪化する主な原因です。

 実際の燃費差については、車種や走り方、道路状況によって変わりますが、一般的には夏タイヤと比べて数%から10%前後燃費が落ちると言われることが多いかと。

 例えば15km/Lで走っていたクルマが、スタッドレスに替えることで13.5~14Km/L程度になるイメージです。ただしこれは平均的な話であり、必ずしもすべてのケースに当てはまる訳ではありません。

 ここで重要なのは、冬場という条件そのものが燃費に不利だという点です。気温が低いとエンジンが暖まるまで時間がかかり、更に空気密度が高くなることで空気抵抗が増えたり、路面が濡れていたり雪が残っていたりすると、タイヤの抵抗は自然と大きくなります。

 つまり、冬に燃費が悪くなる原因はスタッドレスだけではなく、季節全体の影響も重なっているのです。

 近年のスタッドレスは、この弱点を少しでも減らす為に改良が進んでいます。ゴムの配合を工夫して無駄なたわみを抑えたり、トレッドパターンを最適化することで転がり抵抗を低減したモデルも増えています。

 その為、昔のと比べると、現在の製品は燃費性能がかなり向上しており、想像していたほど燃費が落ちないと感じる人も少なくありません。

 それでも、雪や氷の上での安全性と燃費性能を完全に両立させることは難しく、スタッドレスが夏タイヤと同等の燃費になることは基本的にありません。

 しかし、冬道での制動距離や安定性を考えると、多少の燃費低下は安全の為の必要な代償とも言えます。燃費だけを重視して夏タイヤのまま冬道を走ることは、事故のリスクを大きく高める行為になります。

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