オールシーズンタイヤは中途半端、と言われることがあります。確かに、かつてのオールシーズンタイヤは夏タイヤにも冬タイヤにも及ばない性能で、どっちつかずという評価を受けていました。
しかし、そのイメージは既に過去のものでは。最新世代のオールシーズンは、技術革新によって大きく進化し、特定の条件下では最適な選択肢とさえ言える存在になっています。でも何故そういう見方をされるのでしょうか?
オールシーズンが中途半端と言われる最大の理由は、夏も冬も完璧ではないからです。夏タイヤに比べるとドライ路面でのグリップやコーナリング性能はやや劣り、スタッドレスに比べると氷上性能は及びません。
この為に、従来の考え方ではどちらにも勝てないと評価されがちでした。特に2010年代前半までのモデルは、コンパウンドが単純で、気温が高いと柔らかくヨレ、低温では硬化して滑るという欠点を抱えていました。雪道でもブレーキ距離が長く、結局これが中途半端という言葉で見られてしまったのです。
しかし2010年代後半以降、欧州を中心にオールシーズン需要が急増しました。これをきっかけに、グッドイヤー「VECTOR 4SEASONS」、ミシュラン「CROSSCLIMATE」、コンチネンタル「AllSeasonContact」など、世界的ブランドが最新技術を投入します。アジアンタイヤもその追随を果たします。
トレッドコンパウンドには高シリカ素材を多用し、低温でも硬くならず、高温でもグリップを維持出来る配合が採用されています。また、雪上性能を高めるためにV字型の排水溝と3Dサイプを組み合わせるパターン設計が一般化しました。この構造により、従来よりも雪道でのトラクションが向上し、同時にドライ路面での安定性も犠牲にしないという両立が実現されています。
こうした進化によって、現在のオールシーズンは中途半端どころか、非降雪地域や首都圏などでは非常に実用的な選択肢となっています。これらは雪が年に数回しか降らない為、スタッドレスに履き替えるよりもオールシーズンを通年使用した方が経済的で合理的です。
ドライやウェットでの走行性能も日常走行には十分で、静粛性や乗り心地も大幅に改善されています。更に、突然の雪でもある程度の走行が可能な為に、備えとしての安心感もあります。
勿論、すべての環境で万能という訳ではありません。氷点下の路面が続く北海道や東北、北陸などでは、スタッドレスの方が圧倒的に安全です。オールシーズンは、あくまで非積雪地域~軽積雪地域における利便性重視の製品であり、極寒地での走行を目的としてはいません。
しかし、こうした使用条件を理解した上で選べば、それは中途半端ではなく合理的で現実的な選択と言えるはずです。
要するに、オールシーズンの本質は万能ではなく多才です。どんな路面にも対応出来る訳ではありませんが、日常使用で最も多い晴れ・雨・少しの雪に強いというのが真の特徴です。
これは、従来の夏用・冬用を使い分けるという考え方を一歩進めた、新しいカーライフのスタイルとも言えるかと。つまり、オールシーズンは中途半端という評価は、古い時代の性能を基準にした誤解であり、現代の技術をもってすれば、中途半端どころか丁度いい存在になっていると思います。