
冬における日本の道路は、単に雪が降るというだけでなく、気温や時間帯、場所によって路面状況が刻々と変化し、ドライバーにとって非常に厳しい環境になります。
世界的に見れば日本は降雪量が多い地域もありますが、気温自体はそれほど低くない為、雪が降っても完全に凍結する訳ではなく、溶けかけた雪や水分を含むシャーベット状の雪など、多彩で複雑な路面状況を生み出します。
この為に、運転時には単に雪があるから注意と考えるだけでなく、気温や時間帯、場所に応じて路面の状態を推測し、それに応じた運転をすることが重要です。
冬の路面で最も厳しい条件とされるのがアイスバーンです。アイスバーンは降雪後に溶けた雪が冷え込みによって凍結した状態で、表面は硬くテカテカ、摩擦係数が極端に低下する為、通常の路面感覚では想像出来ないほど滑りやすくなります。
特に朝方は冷え込みが強い為、前日に降った雪が凍り、アップダウンやカーブなど通常なら何気なく走れる場所でも体感的に危険度が増します。アイスバーン対策としては、スタッドレスタイヤの性能に頼るだけでは不十分で、速度を最小限に抑える慎重な運転が不可欠です。
更に、アイスバーンには2つの特殊な状態があります。1つはミラーアイスバーンで、交差点や信号前などクルマの停止と発進を繰り返す場所で路面が鏡のように滑らかになった状態です。通常のアイスバーンよりさらに滑りやすく、危険度は倍増します。
もう1つはブラックアイスバーンで、見た目は濡れたアスファルトにしか見えないものの、実際には薄く氷が張っている状態です。薄氷のため路面状況の判別が難しく、夜間や朝方の走行では特に注意が必要です。滑りやすさだけでなく、判断のし難さがブラックアイスバーンの厄介な点です。
一方、雪が踏み固められた圧雪路は、アイスバーンほど極端に滑る訳ではありませんが、乾いた路面に比べれば格段に摩擦が低く、油断すると容易にスリップする危険性があります。多くの車が通ることで出来る轍は、凸凹の凹みがタイヤの進行方向に沿って現れる状態で、無理に乗り越えるよりも轍に沿って走行する方が安全であることもあります。
新雪状態も注意が必要です。降りたての雪は道路と路肩の境界が判別し難く、脱輪の危険がある上、薄く積もった雪でも走行によって滑りやすくなる場合があります。
気温が上昇して雪が溶け、水分を含んだ状態になるとシャーベット状になります。見た目にはアスファルトが出ている部分もあり、一見安全そうに見えますが、水分を多く含んだシャーベットは摩擦が低下し、滑りやすさを甘く見てはいけません。
また、冬のウェット路面も侮れません。単に濡れているだけに見えても、タイヤが水に乗って滑るハイドロプレーニングの危険があり、特に積雪や融雪による水分変化が激しい時期は頻繁に遭遇します。
降雪の初期はウェット状態となり、気温低下でシャーベット、さらにアイス路へと変化し、日中には積雪が溶けて再びシャーベットやウェット路面になるなど、路面は一日を通じて変化します。
加えて、場所によっても危険度が異なります。橋は風通しが良く地熱の保温効果が少ない為に、凍結しやすくトンネルの出入口では乾燥路面と氷雪路面が隣接するので、路面変化によるスリップのリスクが高くなります。日陰も同様に凍結しやすく、気温だけで判断せず、太陽光や風、交通量など周囲環境も意識することが重要です。
冬の道路は見た目以上に変化に富み、アイスバーンやミラーアイス、ブラックアイス、圧雪、轍、新雪、シャーベット、ウェット路面など、多種多様な路面状況が複雑に入り混じります。これらの特性を理解し、気温や場所、時間帯に応じた運転を行うことこそ、安全で快適な冬の走行を実現する鍵と言えるでしょう。
