溝があっても危険?スタッドレスタイヤの寿命と交換の目安

 スタッドレスタイヤの寿命を正しく判断する為には、単に何年使ったかという年数だけでなく、どの程度性能が残っているかという実質的な状態を見極めることが重要です。

 スタッドレスは雪道や氷上での安全性を確保する為に、特殊なゴムとトレッド設計が施されていますが、これらの性能は時間とともに確実に劣化していきます。見た目に溝がしっかり残っていても、ゴムが硬化してしまえば氷上では滑りやすくなり、制動距離も大幅に伸びてしまいます。その為に、見た目だけで判断するのは非常に危険です。

 一般的に、スタッドレスの寿命は3~4年が目安とされています。新品の状態から3年を過ぎる頃には、ゴムの柔軟性が失われ始め、氷上でのグリップ力が急激に低下していきます。

 これは経年劣化によって、ゴムの分子構造が変化し硬化が進む為です。タイヤメーカー各社もデータに基づき、3~4年での交換を推奨しています。特に厳寒地域で使用する場合、この劣化は走行性能に直結する為、寿命の見極めは慎重に行う必要があります。

 摩耗の進行具合も寿命を判断する上で重要な指標です。スタッドレスには通常のスリップサインに加えて、プラットホームと呼ばれる目印が設けられています。

 これは新品時の溝の深さの約50%に達した時点で現れ、このラインが見えると冬道での性能は大きく低下します。たとえ残り溝が見た目には十分ありそうでも、この限界サインが露出した時点で冬用タイヤとしての役割は果たせません。そのまま使い続けると、制動距離が伸びるだけでなく、発進時やコーナリング時にも滑りやすくなるため大変危険です。

 また、ゴムの硬化も見逃せない要素です。スタッドレスは柔らかいゴムが路面の微細な凹凸に密着することで氷上グリップを発揮しますが、紫外線や酸素、熱によって少しずつ硬くなっていきます。

 特に夏場、直射日光の当たる屋外で保管すると硬化が急速に進み、2~3年でも新品時の性能を大きく失うことがあります。寿命を少しでも延ばす為には、直射日光や高温多湿を避け、風通しの良い屋内で保管することが理想的です。タイヤラックなどで地面から浮かせておくと、湿気による劣化も防げます。

 更に、走行距離も寿命に大きく影響します。スタッドレスはサマータイヤに比べて柔らかい為に摩耗が早く、年間1万km以上走行する人の場合、3シーズン目には限界サインが出ることも珍しくありません。

 逆にあまり走らない場合でも、経年劣化によってゴムは確実に硬くなっていくので、走っていないから大丈夫という油断は禁物です。タイヤの寿命は時間と使用状況の両方で決まるという点を理解することが大切です。

 スタッドレスの寿命を決めるのは、走行距離、残り溝、ゴムの硬化、保管環境、使用年数の5つの要素です。

 一般的な使用条件であれば3~4年が目安ですが、丁寧に保管すれば5年程度使える場合もあります。一方で、屋外保管や高走行距離など過酷な条件下では2~3年で性能が著しく低下することもあります。外見ではまだ使えそうに見えても、内部のゴムが硬化していれば氷上では滑りやすくなるので注意が必要です。

摩耗チェックはプラットフォームで確認

①プラットフォーム
②プラットフォームの位置を示す矢印。サイド部に4~6ヵ所あり
③サイド部の矢印とプラットフォームの位置関係

 スタッドレスタイヤの溝の摩耗限界を知らせるのが「プラットフォーム」です。新品時には隠れていますが摩耗するにつれ露出します。新品時の溝は約8mm ~ 10mm、露出した時が摩耗 50% なので約4mm ~ 5mmと考えられます。この状態では冬道で性能低下が高まり、危険性があるため冬用として使用することが出来なくなります。

 但し、夏用としては可能ながら更に摩耗が進み1.6mmになると今度は「スリップサイン」が露出します。こうなると法令違反になるので注意が必要。そもそも夏場の使用はお勧めしませんけどね。

 これについては「夏場の使用は危険」で伝えている通り。ザックリ再度触れると、スタッドレスの柔らかいゴムは、夏場に路面温度が上がると冬場とは一転し性能維持が難しくなります。気温7℃を境にゴムの軟化が進みます。

 特に夏場の高速走行では激しい熱を持ちやすく変形します。この状態で走行すると、乗り心地が悪くなるばかりではなく運転性能も著しく低下、そして変形の繰り返しで最悪破裂(バースト)の可能性が高まります。空気圧不足による変形と同様の危険性が懸念されます。

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