
スタッドレスタイヤをより長く、そして確実に効かせるためには、空気圧管理に拘ることが大切です。空気圧は燃費や乗り心地に直結するだけでなく、氷上や雪上でのグリップ力、さらにはタイヤの寿命にも大きく影響します。
いくら最新のスタッドレスを装着しても、空気圧が適正でなければその性能を十分に発揮することは出来ません。空気圧はスタッドレスの効きを支える最も基本的で、しかし見落とされがちなポイントです。
スタッドレスの適正空気圧は、基本的にクルマメーカーが指定している値と同じです。運転席ドアの内側やセンターピラー付近のラベル、または取扱説明書に記載されています。特別に変更の指示がない限り、夏タイヤと同じ空気圧を目安にすれば問題ありません。
但し、冬は気温が下がるので、タイヤ内部の空気が収縮し、実際の空気圧は想定よりも低下していることがあります。寒い季節の初めには、必ず冷えた状態のタイヤで空気圧をチェックすることが重要です。
一方で、路面環境に応じて空気圧を微調整することで、タイヤの性能をより引き出すことも可能です。
ふわふわの新雪路では、空気圧をやや低めに設定することで接地面積が広がり、雪をしっかり踏み固めてグリップしやすくなります。タイヤが柔らかく雪面を掴むように働くので、発進や登坂時のトラクション性能が向上します。
反対に、凍結したアイスバーンでは空気圧をやや高めに設定するのが有効です。接地面がやや小さくなることで面圧が上がり、ブロックが氷面をしっかり噛み、滑りを抑えて安定した走行ができます。
但し、空気圧の調整は慎重に行う必要があります。低すぎるとタイヤがたわみ過ぎて発熱しやすくなり、偏摩耗やバーストを招く恐れがあります。逆に高すぎると接地面が中央寄りになり、雪上でのグリップが低下します。
近年のスタッドレスは構造やゴムの柔らかさが精密に設計されており、空気圧が適正値から外れるとそのバランスが崩れてしまいます。目安としては、車両指定値の±0~+20kPa程度の範囲に収めるのが理想的です。雪路ではやや低め、氷路ではやや高めといっても、この範囲内で調整することを心がけましょう。
空気圧を測る際は、タイヤが冷えている状態で行うのが鉄則です。走行直後は内部温度が上がり空気が膨張して、実際より高い値を示してしまいます。また、外気温や直射日光の当たり方によっても数値が変化します。なるべく同じ環境や時間帯に測定すると、より正確に管理できます。
空気は自然に少しずつ抜けていく為に、理想的には月に1度の定期チェックが望ましいかと。最近は空気圧センサーを搭載したクルマも増えていますが、ゲージでの手動確認を習慣付けるのが確実です。
空気圧管理は、タイヤの性能を維持する為だけでなく、クルマの燃費や安全性にも直結しています。空気圧が適正なら転がり抵抗が減り、燃費の悪化を防ぐことができます。また、タイヤの変形が少ない為に摩耗も均一になり、結果として寿命も延びます。
スタッドレスはゴムが柔らかく、一般タイヤより空気圧の変化に敏感です。適正値を守ることが、結果的に効きと経済性の両立に繋がります。
雪道や氷路ではタイヤ選びばかりが注目されがちですが、空気圧の管理こそがスタッドレス性能を支える土台です。月に1度の点検を習慣にして、季節や路面の変化に合わせた調整を意識すれば、タイヤは常に本来の力を発揮してくれます。空気圧は目に見えない小さな数値ですが、その差が冬の安全と安心を大きく左右するのです。
