オールシーズンタイヤのローテーションを行う際は、まずタイヤのパターン(方向性の有無)を理解することが大切です。多くのオールシーズンタイヤに採用されているV字型トレッドは方向性パターンと呼ばれ、溝が進行方向に対してV字状に刻まれています。この形状は、水を中央から外側へ効率よく逃がすことで、雨天時の排水性を最大化するのが狙いです。
しかし、この方向を逆に取り付けると、水はけが悪化し、ハイドロプレーニングの危険性が増します。更にウェットグリップやブレーキング性能も低下する為、進行方向を守ることが極めて重要です。従って、V字パターンなど方向性のあるタイヤは、前後の入れ替えは可能でも左右の入れ替えは出来ません。
一方で、左右対称パターンや非対称パターンのオールシーズンタイヤでは、方向性がないか、またはOUT側とIN側の指定のみがある為、クロス(左右)ローテーションも可能です。この違いを理解せずにローテーションすると、せっかくの性能を十分に発揮出来なくなります。
ローテーションの目的は、摩耗を均一にしてタイヤ寿命を延ばし、走行安定性を維持することにあります。前輪駆動(FF)の車は前タイヤの摩耗が早く、後輪駆動(FR)は後ろが減りやすく、四輪駆動(AWD/4WD)は比較的均等ですがそれでもわずかな差が生じます。
特に方向性タイヤの場合は左右入れ替えができない為、前後のみのローテーションで摩耗バランスを整えることが基本です。
推奨されるタイミングは、約5,000kmもしくは約6ヶ月と言われます。使用環境(街乗り・高速・雪道など)や車種によって前後の減り方が異なる為、定期的にトレッドの残り溝をチェックし、偏摩耗が出ていないか確認します。
作業手順としては、平坦な場所に車を停めてサイドブレーキをかけ、フロアジャッキとジャッキスタンドを用意します。ナットを軽く緩めたうえで車を持ち上げ、前後のタイヤを入れ替えます。
この時、タイヤの側面に刻印された進行方向マーク(矢印)を必ず確認し、車の進行方向に合わせて取り付けます。取り付け後はトルクレンチでメーカー指定のトルク値まで締め付け、短い距離を走行し異音やナットの緩みがないか確認します。
まとめると、V字パターンなど方向性のあるオールシーズンタイヤのローテーションは、前後のみの入れ替えが基本で、左右は固定です。進行方向マークを必ず守り、定期的な点検を行うことで、雨天時や雪道でも高い安全性を維持しながら、タイヤ寿命を最大限に延ばすことが出来ます。