M+Sマークが付いていれば冬も走れる? 誤解されやすいポイント

 M+Sタイヤとは「Mud & Snow(マッド&スノー)」の略で、日本語では「泥や雪」と訳されます。この表記はタイヤのサイドウォールに刻印され、泥や雪道での走行が可能であることを示しています。

 表記の仕方は「M+S」「M.S」「M/S」などメーカーによって多少異なりますが、基本的な意味は同じです。文字通り、泥や雪でも走行可能であることを示すため、一般的には冬季の道路での使用をイメージさせます。

 しかし、このM+Sという刻印が示す性能は、あくまでもメーカーの自主表示であり、法的に冬道での安全性や性能を保証するものではありません。その為、刻印があるからと言って、厳しい雪道や凍結路でも安心して走行出来るとは限らないのです。

 実際には、浅い雪道であれば何とか走れる程度の性能しかないタイヤも存在し、夏タイヤ並みの性能しか持たない製品でもM+Sの刻印があることがあり、この点で怪しい、と感じる人が多いのも事実です。つまり、M+Sタイヤという表記だけでは、冬道での安全性を判断するのは非常に難しいかと。

 更に、M+Sタイヤの扱いについては、道路を管理するNEXCOなどの解釈にも違いがあります。高速道路の冬用タイヤ規制では、M+S刻印だけでは通行不可とする場合がある一方で、一定条件下では通行可能と見なされる場合もあります。

 特に注意すべきは、スノーフレークマークが付いていないM+Sタイヤでは、高速道路での冬用タイヤ規制に対応出来ないとされるケースがあることです。つまり、M+Sの刻印だけでは、そのタイヤが冬道での安全性を十分に保証するものではない為、道路規制や走行条件によっては通行不可となる場合があるということです。

 一方で、M+Sタイヤの中にも、メーカーが公的な試験を受け、冬用タイヤとして十分な性能を備えた製品も存在します。こうした製品は、雪道でのグリップ性能や制動距離などが一定水準をクリアしており、実際に冬道でも安心して使用出来るものです。

 しかし、このような高性能のM+Sタイヤは全体から見ると少数派であり、性能の差が非常に大きい為、ユーザーはM+Sタイヤって結局どうなの? という混乱に陥りやすくなります。

 そこで重要になるのが「スノーフレークマーク」です。スノーフレークマークは、タイヤが冬用として認定された最低限の性能を備えていることを示す記号で、雪道での制動性能やグリップ性能が一定基準を満たしていることを保証します。

 特に高速道路の冬用タイヤ規制では、このスノーフレークマークの有無が通行可否の目安となります。最近のオールシーズンタイヤの多くには、このスノーフレークマークが付いている製品が増えてきていますので、M+Sタイヤの購入を検討する際には、まずこのマークが付いているかどうかを確認することが重要です。

 スノーフレークマークがある製品なら、一般的な冬道であれば安心して使用出来る可能性が高く、M+S刻印のみのタイヤよりも安全性が明確です。

 しかし、ここで注意すべき点は、スノーフレークマーク付きのオールシーズンであっても、氷結路や積雪量が非常に多い状況では、専用のスタッドレスタイヤには性能面で及ばないということです。

 スタッドレスは雪や氷上での制動力やグリップ力を最大限に引き出す設計がされており、凍結路や深雪の中での安全性は圧倒的に高く、冬の過酷な条件で日常的に走行する地域では、オールシーズンではなくスタッドレスを選ぶ方が安全です。

 まとめると、M+Sタイヤはあくまでも泥や雪での走行が可能であるというメーカー表示であり、性能は製品ごとに大きく異なります。安全性を重視するなら、M+S刻印だけではなく、スノーフレークマークの有無を確認することが重要です。

 そして、雪や凍結が厳しい地域では、オールシーズンよりもスタッドレスの使用が最も安全です。M+Sタイヤは万能ではなく、あくまで冬道でも最低限は走れる可能性があるタイヤと理解し、条件に応じた適切なタイヤ選びが必要です。

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