雪道を夏タイヤで走ると違反?知らないと危ない冬タイヤ装着の義務

 積雪時には、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンなどの冬用装備が必須です。しかし、首都圏などでは雪が積もっても夏タイヤのまま走行し、立ち往生するクルマが後を絶ちません。

 実際、雪道を夏タイヤで走行するのは極めて危険です。ブレーキを踏んでも止まらず、ハンドルも効かず、わずかな坂道でもスリップして全く動けなくなります。これは単なる不注意ではなく、命に関わる危険行為と言っても過言ではありません。

 記憶に残るのは昔、そう2014年2月、東京都心を襲った記録的な大雪です。8日と15日の2週連続で30センチ近い積雪となり、各地で交通がマヒしました。東名高速道路では事故車両が車線をふさぎ、上下線ともに大渋滞が発生。首都圏の主要道路でも多くのクルマが立ち往生し、救助活動が続くほどの混乱となりました。

 東京でここまでの積雪は何年かに1度あるかどうか。普段は雪の心配が少ない地域だけに、スタッドレスを用意する人は限られています。しかし、滅多に降らないからと油断して夏タイヤのまま走行するのは、まさに危険と無責任の表れです。

 私自身、積雪時に夏タイヤで走行したことは1度もありません。雪国ではそんなクルマを見かけること自体ありえない話です。浅い雪ならオールシーズン、深い雪ならスタッドレス、いずれにしても冬用装備が必要なのは当然です。

 雪道では、発進・停止・旋回のすべてに滑りやすいリスクがつきまといます。たとえチェーンでも、無いよりははるかに安全性が高いです。冬用装備を怠ることは、自分だけでなく他人を危険にさらすことでもあります。

 そして、意外と知られていませんが、降雪時に冬用装備をしていないと「条例違反」となる可能性があります。日本では沖縄を除く46都道府県全てで、雪や凍結時の冬タイヤ・チェーン装着に関する条例が定められています。

 たとえば東京都の「東京都道路交通規則 第8条第6号」では、「積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路において、自動車又は原動機付自転車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること」と明記されています。つまり、雪道を夏タイヤで走ること自体が法令違反になりうるということです。

 もし夏タイヤでスリップ事故を起こせば、過失責任を問われるのはもちろん、他車を巻き込んだ場合には重大な損害賠償にも繋がりかねません。警察からの指導や罰則を受けるだけでなく、保険の適用にも影響する場合があります。雪道を夏タイヤで走るのは、事故を起こしてくださいと言っているようなものです。

 JATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)では、全国の都道府県ごとの条例をまとめ、「都道府県道路交通法施行細則又は道路交通規則(抜粋)」として公表しています。自分の住む地域だけでなく、旅行先や帰省先、出張先などでも雪が降る可能性があるなら、一度確認しておくべきです。

 首都圏のように年に1度あるかないかの降雪でも、道路が凍結すれば一瞬で危険な状態になります。夜間や早朝の橋の上、トンネルの出入口付近など気温変化が激しいところなどは特に滑りやすく、注意が必要です。冬の安全運転は、天気予報を見てからでは遅いのです。シーズン初めのうちにスタッドレスやオールシーズンに交換しておくことで、突然の雪にも慌てず対応出来ます。

 雪道を安全に走るための最大のポイントは備えです。スタッドレスやチェーンを準備しておくだけで、事故や立ち往生を防ぐことが出来ます。自分の身を守るのはもちろん、他のドライバーや歩行者の安全を守る為にも、冬の道路には万全の準備で臨むべきです。

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