通年利用可能なオールシーズンタイヤ、アイス路を除けば走行も行ける、というのが現在の評価。M+Sにスノーフレークマークを刻印し、冬タイヤとしての一面を満たします。夏・冬タイヤの技術的特徴をバランス良く兼ね備え、あらゆる天候で一貫した性能を発揮します。
そこで目立つのが特に乗用車用としてV字パターンが多くを占めています。当然ながら効きを第一に、その他の理由もあるのかな?
オールシーズンタイヤにおいてV字パターンが主流になっているのは、単に見た目の特徴やメーカーのマーケティングだけではなく、性能面での合理性と市場の歴史的な経緯が絡み合っているからです。
まず技術的な面を見れば、V字パターンにはいくつかの重要なメリットがあります。雨の日に強い理由は、水をタイヤの中心から効率的に左右へ逃がす構造にあります。直線的な縦溝だけだと限界が来やすいのですが、V字が矢のように外へ水を押し出すことでハイドロプレーニングのリスクを減らします。
また雪道やシャーベット路では、溝が斜めに噛む形になり、路面を引っ掻くようにトラクションを生み出し易いという特徴があります。夏の排水性能と冬の雪路性能、この両方を一つのパターンである程度両立出来るのがV字の強みです。
次に歴史的な背景を。1990年代後半から2000年代にかけてグッドイヤーが「VECTOR」シリーズでV字パターンを採用し、それがオールシーズンタイヤの代名詞となりました。
性能だけでなくいかにも全天候型らしいデザインとして消費者に受け入れられ、他メーカーも同じ市場で戦うなら似たビジュアルと特徴が必要と考えて追随。その結果、オールシーズン=V字パターンというイメージが定着し、今日に至っています。つまり性能上の合理性と、マーケティング上の先入観が重なってV字が主力になった訳です。
但しこれは絶対ではありません。スタッドレスタイヤの進化を見ると、必ずしもV字ではなく、左右非対称や複雑なブロック配置の方がアイス性能や操縦安定性を高めるケース多いことが分かります。
その為、オールシーズンでもアイス性能をもっと伸ばす方向へ進めば、V字一辺倒ではなくなる可能性があります。実際にSUV用では左右非対称パターンが登場しており、車体の重さや重心の高さに合わせてふらつきを抑える狙いがあります。
つまり現状は、歴史と市場がV字優位にしているけれど、技術的には別の進化の道も十分考えられる段階にある、ということです。将来的にオールシーズンでアイス路ももっと効かせたいというニーズが強まれば、今後はV字から左右非対称パターンへのシフトが起こるかもしれません。
要するにV字パターンは性能と歴史の両面から定着したものの、今後の進化はよりスタッドレス寄りにするか、夏タイヤ寄りに割り切るかで再び形が変わる余地を持っています。