スタッドレスタイヤの購入は新製品 or 従来品 ?

 スタッドレスタイヤの新製品は、氷雪性能を軸に低燃費、長寿命、静粛性と言った要素をいかに両立させるかが技術的な焦点になっています。

 従来、アイス性能を高めるためにはゴムを柔らかくする必要がありました。しかし、柔らかくすれば摩耗は早まり、ライフは短くなる。逆に硬めにすれば寿命は延びてもグリップ力は低下します。

 この二律背反を克服する為に、近年はナノレベルのシリカ配合や、ゴム内部にミクロの水路を形成して氷上で発生する水膜を効率的に除去する吸水コンパウンドなどが採用されるようになりました。これにより、アイス性能を落とさずに摩耗寿命も確保するという一見矛盾した性能の両立が可能となり、最新世代の最大の魅力となっています。

 更に、最新モデルは燃費性能(転がり抵抗の低減)にも配慮されており、スタッドレス特有の重さ、ゴムの柔らかさによる燃費悪化を最小限に抑えています。

 結果として、従来品に比べ年間走行距離あたりのランニングコストが抑えられるケースも珍しくありません。新品価格は高くても、摩耗の遅さと燃費向上効果を考慮すれば1年あたりの実質コストは必ずしも従来品より高くなる訳ではないのです。

 一方で従来品は、数年前まで各メーカーが技術を競い合って開発した当時のフラッグシップです。確かに最新モデルに比べれば氷上でのブレーキ距離やコーナリング時の安定性などは劣りますが、それは飽くまで最新比であって、日常の雪道走行には十分な性能を備えています。

 特に都市部や平野部のように積雪が少なく、アイス路面に出くわす頻度が低い地域では、従来品でも実用上問題になることはほとんどありません。また、従来品は販売期間が長いためサイズラインアップが豊富で、特殊なサイズや大径ホイールを履くクルマでも選びやすいという現実的な強みがあります。

 価格面では、新製品に比べて2~3割、場合によってはそれ以上安価になることもあり、コストパフォーマンスの高さは無視できません。雪道走行にある程度慣れており、ブレーキやハンドル操作に自信があるドライバーであれば、この価格差を理由に従来品を選ぶ合理性は十分にあります。

 むしろ、毎年のように雪道を走るが極限の性能までは求めない、というユーザーにとってはベストバランスかもしれません。

 注意すべきは、新製品と従来品の差が誰にとって意味があるのかという点です。例えば、雪道初心者や都市部からスキー場へ行く機会の多いドライバーは、急な圧雪やアイスバーンでの挙動変化に対応出来ないことが多い為、より余裕のある性能を持つ最新モデルを選んだ方が安心です。

 逆に、雪道常用で運転に慣れている人や、走行環境が限定的な人なら、従来品のコストメリットを享受しても問題は少ないでしょう。

 新製品は技術進化の恩恵を最大限に受け、安全性と安心感を買う選択、従来品はコストと実用性のバランスを重視した現実的な選択と言えます。

 新旧いずれを選ぶにしても、肝心なのは自分の走行環境とドライバーとしての経験値に見合った判断を下すこと。新製品至上主義でもなく、安さ一辺倒でもなく、タイヤがクルマと人の命を支える道具であることを踏まえた上で、自分に合った一本を選ぶのが理想です。

タイトルとURLをコピーしました