オールシーズンタイヤの酷暑時における性能はどうよ?

 オールシーズンタイヤは、夏タイヤとスタッドレスタイヤの中間的な性能を持ち、年間を通じてある程度の路面状況に対応出来るよう設計されています。しかし、その中心的な設計ターゲットは欧米の温帯や寒冷地を基準としている場合が多く、日本の真夏、特に近年の酷暑環境においてはやや注意点があると思います。

 酷暑環境では路面温度が50~70℃に達することもあり、タイヤのトレッドゴムは想定以上に柔らかくなります。オールシーズンは冬の低温域でも硬化し過ぎないようシリカを多く配合し、低温柔軟性を確保していますが、その副作用として高温下では夏タイヤに比べてゴムが過剰に軟化しやすく、結果的にドライ路面での剛性感やハンドリング応答性がやや鈍る傾向があります。

 また、トレッドパターンもサイプや複雑なブロック形状が多く、酷暑の高速走行時にはブロックの倒れ込みや変形が増え、発熱と摩耗の進行が早くなることがあります。

 更に、空気圧にも影響が出ます。高温下では内部空気の膨張によって冷間時より20~30kPaほど圧力が上がることがあり、設定値が低めだと熱によるたわみが増して発熱が加速し、逆に高すぎても接地面が減りグリップ低下を招きます。酷暑時にオールシーズンを使用する場合は、メーカー推奨の空気圧管理が特に重要で注意を払うことが望まれます。

 耐摩耗性の面では近年のオールシーズンは改良が進み、耐熱性を意識した化合物や補強材を採用するモデルも増えていますが、それでも夏専用ハイパフォーマンスタイヤと同等の酷暑性能を持つ訳ではなく、あくまでオールラウンド性を重視した設計であることを理解する必要があります。

 しかしながら、酷暑の中でオールシーズンは使えないということではありません。法律的にも安全基準的にも、夏場に走行不可とされている訳ではなく、実際に日本や欧米の多くのドライバーが真夏でも普通に使用しています。

 但し、夏タイヤに比べると性能面にいくつかの弱点がある為に、使えるけれど条件によっては性能低下や寿命の短縮が起きやすいというのが正確な表現になろうかと。

 一方で、都市部の低速域や日常の短距離移動、時々の高速利用程度であれば、酷暑でも実用上は問題なく安全性も確保出来ます。近年のオールシーズンは耐熱性の向上も進んでおり、酷暑時の性能低下は初期世代よりも小さくなっています。

 結論として、酷暑の中でもオールシーズンは使えるが、夏タイヤほど高温耐性はない為に、長距離・高速・高荷重走行が多いなら夏タイヤに軍配が上がります。逆に街乗り中心で、年間を通じて履き替えの手間やコストを抑えたい人には、酷暑でも十分実用的な選択肢になり得ます。

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