速度カテゴリーZRとは何を示す?

 「ZR」という速度カテゴリーは、フランスのタイヤメーカーであるミシュランが、1974年にクルマ用タイヤとして世界に先駆けて規定したのが始まりです。

 背景には、当時ミシュランが手掛けていた高性能ラジアルタイヤと、ヨーロッパのスーパーカー市場の発展があります。1970年代後半から80年代初頭にかけて、これらのクルマが相次いで登場し、最高速度が240km/hを軽く超える性能を持つようになりました。

 当時の速度カテゴリーは「V」(240km/hまで)が上限だった為、対応する新たなカテゴリーが必要になったのです。

速度カテゴリーは旧規格だという‥

 タイヤの速度カテゴリーにおける「ZR」という表示は、もともとは「このタイヤは240km/hを超える高速走行に対応している」ということを示すための表記でした。

 クルマの性能が年々向上し、特に欧州の高速道路(アウトバーンなど)では法定速度の制限がない区間もある為、タイヤの安全基準にも高速耐性の明確な区分が必要になりました。その中で「ZR」は、かつて「時速240km/hを超えるクルマ向け」という最上位クラスの印でした。

 例えば、1980年代~1990年代頃のスポーツカーや高性能GTカーでは、カタログやタイヤサイドウォールに「205/55ZR16」といった刻印があり、「ZR」が付いていることで超高速対応タイヤであることがひと目で分かったのです。

 但し、その後の技術進化に伴い、タイヤ業界はより細かい速度区分を設けるようになります。例えば「W」カテゴリーは270km/hまで、「Y」は300km/hまでといった具合で、「ZR」は単なる超高速対応の意味から、具体的な上限速度が併記される方式に変わりました。

 現代のタイヤでは、単に「ZR」とだけ刻印されるのは稀で、「275/35ZR19 96Y」のように「ZR」と「Y」を組み合わせた表記が使われます。これは「ZR」が240km/h超対応を示しつつ、「Y」によって最高300km/hまでという具体的な限界を補足している訳です。

 言い換えれば、「ZR」は今や単独で速度限界を定義するものではなく、高速カテゴリー帯に属しているという伝統的な指標的役割を持ちながら、実際の限界速度は最後の記号で明確化されています。

 この背景には、クルマメーカーの要求性能の高度化と、国際規格(主に欧州のECE規格やISO規格)の整備がありました。特にスーパーカーやサーキット走行を前提とするクルマでは、300km/h以上の耐性が求められ、「Y」を超える「(Y)」表記(300km/h超対応)も登場しました。

 しかし古くからの業界慣習として、超高速域のタイヤサイズ表記には「ZR」が残り、今日でも高性能スポーツタイヤの象徴的な存在として見ることができます。つまり「ZR」は、現代では技術的意味よりも、このタイヤは通常のクルマ用タイヤではなく、ハイパフォーマンス領域の製品である、という印象付けの役割も果たしています。

 「ZR」という記号は少し特殊で、単体では正確な最高対応速度を示していません。単に「このタイヤは240km/hを超える領域での使用を想定している」という意味だけで、具体的に270km/hまでなのか300km/hまでなのかは分からないのです。

 その為に現在では、「ZR」表記の中でも追加で「W」や「Y」という速度記号を併記して、より正確な性能を示すようになっています。

 例えば「275/40ZR18 99Y」という表記なら、「ZR」は高速仕様であることを示し、「Y」が300km/hまで対応可能であることを明確にしています。逆に、昔のタイヤには「ZR」のみが記されていて、カタログやメーカー資料を見ないと最高速度が分からない場合がありました。

 更にややこしいのは、「ZR」がタイヤサイズ表記の中に組み込まれる位置です。速度記号は通常サイズ表記の最後に来ますが、「ZR」の場合はサイズの中間に入ることが多く、例えば「245/40ZR18」というようになります。

 これは構造的に高速仕様であることを強調するための古い慣習の名残で、現在の「245/40R18 97Y」のような標準的な書き方とは少し違います。この為、「ZR」のあるタイヤを選ぶときは、見た目だけで判断せず、必ずカタログやメーカーの公式情報で速度性能を確認することが大切です。

 まとめると、「ZR」は速度カテゴリー。この場合、240Km/h以上に耐えられるということ。現在それ以外に「W」や「Y」などの速度記号もあります。「W」は270km/hまで、「Y」は300km/hまでの最高速度に対応しています。なお最高速度300km/h超の場合は、LI(ロードインデックス)及び速度記号「Y」を括弧書きに表示します。(例)245/40ZR19(94Y)

 因みに速度カテゴリーには「SR」(180km/hまで対応)、「HR」(210km/hまで対応)、「VR」(240km/hまで対応)なども。「ZR」が登場する前にはこれらの記号が主流でした。

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