猛暑でタイヤが溶けないか心配‥

 今年も酷暑が続く日本列島です。連日35℃以上になりもう言葉が出ない‥ こんな時にタイヤは大丈夫? 溶けないかな?

 まず素朴な疑問から。気温35℃でタイヤは溶けるのか?ということ。夏の高温期におけるクルマの安全性やタイヤの寿命を気にするドライバーにとって非常に重要です。

 結論から言えば、気温が35℃程度であっても、通常の市街地走行や日常的な高速道路の利用で、タイヤが物理的に溶ける(液化する)ことはありません。現代のタイヤは、合成ゴム、カーボンブラック、シリカ、ナイロン、スチールベルトなど複数の高耐熱素材によって構成されており、一般的な使用条件では130℃程度の内部温度にも耐えられる設計となっています。

 従って、夏の猛暑で外気温が35℃に達したとしても、それだけでタイヤが溶けるという事態には至らないかと。

 しかし、問題は単なる気温だけではなく、実際の路面温度や使用環境にあります。35℃の気温下では、アスファルト路面の温度が70~80℃を超えることも珍しくありません。この高温の路面と高速回転するタイヤが接触し続けることで、タイヤのトレッド面に熱が蓄積され、内部温度が急上昇します。

 特に高速道路での長時間走行、積載重量が重い状態、空気圧の不足などの条件が重なると、タイヤはその限界温度に近づくか、場合によってはそれを超えてしまうことがあります。このようなときに起きるのが、メルティングとも呼ばれる現象です。

 メルティングとは、タイヤの表面ゴムが過熱によって異常に柔らかくなり、ねばつき、削れ、あるいは表面が波打つように変形する状態を指す言葉です。

 一般道でこの状態に達することは稀ですが、真夏の高温下、高速走行、空気圧不足、あるいは長時間の渋滞中に、頻繁な発進、停止を繰り返すような条件では、局所的にメルティングに近い現象が起きることがあります。

 トレッド部がドロドロに溶けるというよりは、あたかも焼け焦げたような臭いが発生し、表面がベタついたり、ゴム粉が異常に発生したりする状態です。

 こうした過熱状態が継続すると、タイヤのグリップ性能が著しく低下し、制動距離の延長やハンドリングの不安定さ、更にはバーストのリスクも高まります。

 特に、タイヤ内部にあるスチールベルトやカーカスコードなどの構造材が熱膨張と収縮を繰り返すことで、耐久性が著しく損なわれ、内部破損の危険性が生じます。これがスタンディングウェーブ現象として現れることもあり、タイヤの一部が波打つように変形してバーストに至るケースもあります。

 気温35℃でタイヤが溶けるかどうかということでは、通常使用では溶けないが、悪条件が重なればタイヤの表面や構造が熱で変質する可能性がある、ということです。

 ことさら空気圧の管理を怠ることは、タイヤの変形を招き、発熱量を増加させる大きな要因となります。夏場は朝晩と昼間で空気圧が大きく変動するため、タイヤの点検や調整はこまめに行うべきです。

 タイヤは年数によっても耐熱性が劣化します。紫外線や酸素、オゾンによる経年劣化が進んだタイヤは、表面にクラックが入りやすく、高温にさらされることでゴムの硬化とともに破損リスクが高まります。

 夏の高温下でのタイヤ使用においては、気温35℃という数値を過小評価してはいけません。実際にタイヤが溶けるというよりも、トレッドの軟化、摩耗の急進、グリップの低下、そして最悪の場合にバーストなど、さまざまな熱由来のリスクが存在します。

 適切な空気圧の維持、定期的な点検、状態に応じた安全運転が、こうしたリスクを回避するための鍵となります。

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