オールシーズンタイヤは第3の選択肢

 オールシーズンタイヤの存在意義は、冬タイヤと夏タイヤの中間という新しい立ち位置です。特に日本の非降雪地域では、スタッドレスを導入するかどうかの判断が難しく、毎年1回あるかどうかの降雪に対してわざわざスタッドレスを用意するのは負担が大きいかと。

 その需要の隙間を突いたのがオールシーズンであり、グッドイヤーが長い年月をかけて日本市場にその考え方を浸透させてきたのは大きな功績です。

 2016年の「Vector 4Seasons Hybrid」でSNOWマークが刻まれたことは、国内での信頼を得る為の重要な一歩でした。加えて2022年の「Vector 4Seasons GEN-3」登場は、欧州市場における評価を国内へ持ち込みつつ、ユーザーへの安心感を更に高めるものです。

 つまり2018年までの影の存在から、2019年以降は市場の一角を担う存在へと一気にシフトしたのです。

 しかし、国内では正直未だに普及するかどうかが大きな課題として残っています。理由は明確で、積雪が多い地域では絶対的にスタッドレスが必要となり、非降雪地域では夏タイヤで十分では? という心理が強い為です。

 オールシーズンはその中間を狙うものの、需要が広く定着するにはある年の雪への対応だけでなく、夏場の性能・燃費・耐摩耗性まできちんと評価されなければなりません。また海外メジャーメーカーの積極性と比較して、日本メーカーがまだ様子見をしているのもポイントです。

 グッドイヤー、ミシュラン、ピレリ、コンチネンタルといった海外メジャー勢は積極的にSUV用やハイパフォーマンス向けを拡充し、ラインアップを強化しています。一方でダンロップの「SYNCHRO WEATHER」は、スタッドレス寄りの冬性能を打ち出すことで差別化を狙った国内初の本格的オールシーズンと言えます。

 更に近年はアジアンタイヤメーカーもじわじわと参入を始めており、コスト面での強みを背景に、普及の一翼を担う可能性が高まっています。但し、現状ではまだ製品数に課題が残り、今後の展開に期待が寄せられている段階です。

 結局のところ、オールシーズンが日本市場でどこまで浸透するかは、ユーザーがスタッドレスと夏タイヤの2本立てを面倒と感じるか、それとも安全の為ならスタッドレスを選ぶべきと考えるか、その意識の変化にかかっていると言えます。

 今後の市場拡大は間違いなく進むでしょうが、一気に主役になるのではなく、スタッドレスと夏タイヤの補完的な第3の選択肢として定着する流れが現実的だと思います。どうかな?

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